hp200LXの修理で、液晶の不具合の割合は相当に高いと思います。
ほとんどは、基盤からの信号を伝えるフレキシブルケーブル(flexciblecable)の断線(partially
open)や液晶裏の半田不良(poor soldering)を直すことで復帰させることができます。
しかし、液晶にはガラス材が使われているため、落下などによる割れが生じることがあります。
この場合には液晶全体を交換する以外に手だてがありません。
今回紹介する不具合も、液晶の交換しかないとあきらめていたものですが、不完全ながらも修理の可能性があることを紹介させていただきます。
不具合は、液晶の表面が変色してくる症状です。
液晶の表面が、中央部分から徐々に変色し、最終的には波打ったような状況にまで進行します。
同じような状況で使っていたり、保存していても一部で発生しますので、一概に環境のせいとも言えません。
古くなると必ず生ずるわけでもなく、発生機序(原因と過程)が良くわかりません。
黒くなった部分は、当然表示も見えなくなり、hp200LXが使い物にならなくなります。
酸っぱい臭いがすることが特徴的です。
ブルースカイ(BlueSky)さんも、ブログで報告しています。
(449)200LXの液晶が劣化していた。
原因は良くわかりません。 いわゆる「ビネガーシンドローム」の一種だろうと思っています。
映画フィルムに生ずるビネガーシンドローム http://www.filmpreservation.org/
(ビネガーシンドロームは、湿気が原因の一つとされています。 また、悪くなったフィルムが不具合を誘発するともいわれています。)
今回は、このような状況になった液晶修理の報告です。
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とにかく表面の偏光板(ポラロイドフィルムシート)を剥がします。(000)この写真は 001以降とは別の液晶です。) 剥がすことで、強烈な酢酸臭(だと思います)が鼻を突きます。 硬化した粘着材は取れずにガラスの表面に残ります。( 001) 残った粘着剤を取るために、剥離剤(ネオ ホルベックス(商標))を垂らします。( 002) (この剥離剤はバックライト改造(backl-ight modification)で使っており、作業性良好です。) 薄いガラスのようにカチカチに硬化していた粘着材も、数分で軟化してプラスティックのへらで掻き取ることができます。( 003) |
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アクリルサンデー(商標)で仕上げの拭き取りを行えば、鏡面のようにきれいになります。( 004) 修理と言っても剥がした偏光板は硬化、変色して使えません。 結局、別の偏光板を持ってくるしかありません。 それらしい偏光板を、ネットで入手してはみたものの、回転角度の相違が微妙にあるので、必要な面積を切り出すには大きな偏光板を必要とし、また粘着材も適当なものを探さなくてはなりません。 何より、コントラストが綺麗に得られません。 薄青い表示にしかなりません。
(A)表面の偏光板を剥がした液晶。 表示が無い。(電源は入っています。) (B)偏光板を置いてみる。 青く反転表示が現れる。 (C)偏光板を液晶上で水平回転させ、適度な表示が現れる点を探す。 45度程度が最良でした。 表示部の大きさに合わせて偏光板を購入したのですが、無意味でした。 表示部より十分に大きな偏光板が必要です。 |
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そこで、表面のポラロイドシート(偏光板)以外が壊れた別の液晶表示部から表面の偏光板のみを移設することにしました。 ドナー(提供機)は、ガラスの一部が割れた液晶表示部を使います。( 005) 偏光板を剥がす際には、ドライヤーを使って表面を十分に暖めます。 隅からカッターの歯を入れ、カッティングプライヤで挟みます。(切断しないように適度な力の調整が必要です。) 007 |
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その後すぐに先ほど鏡面に仕上げた患者(直す液晶)に貼り付けます。( 008)偏光板は結構厚いので、普通に空気を入れないように指でさすりながら貼ることは難しくないという感じです。 綺麗に貼れました。( 009) 表示も綺麗に出ています。( 010)縦に抜けがあるのは、別の原因ですね。 |
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初めての移設。 カッターで掴(つか)んだ傷がわずかに残っている( 011)ものの、カバーを付ければ見えないところだし、意外と簡単だったと感じました。 しかし、よく見ると埃(ほこり)が入ってしまいました。( 012赤矢印) 間髪置かずに移設したつもりだったのですが、静電気もあるし、ほこりは天敵ですね。 |
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